2010年4月8日木曜日

「4cm四方の肉塊」の巻

 2010年4月2日。手術は午前10時から行われる。家族は8時くらいには来ておいてほしいとのことで、午前七時に家を出ることにした。

 目覚まし時計を六時半に合わせていたが、息子に六時二十分に起こされた。

 病院に着くと、「もしかしたら来れないかもしれない」と昨日言っていたお姉さんも来てくれていた。五時半起きだという。

 妻は、「なんかな、今さわっても(しこりが)わかれへんねん。もしかしたら無くなったんとちゃうやろか?」などと言っている。まぁ、そんなわけはない。

 白い手術着に着替え、圧力ストッキング、紙パンツ・・をはいた妻と、お姉さん、息子、ワシは一昨日までK病院にいたという看護師さんに伴われて、病室の四階から手術室のある三階へ降りた。

 手術室の扉が開き、妻は手を振りながら中に歩いて入っていった。以前に盲腸で手術した時は、点滴か何かで予備麻酔をして、ストレッチャーに乗った状態で手術室に入ったと記憶するが、もうそんなことはしないのだと言う。

 デイルーム(休憩室)で待機しておいてくれと、看護師は言う。売店で弁当を買って、朝食をとる。早くて二時間・・・。まったくなんでこんなに時間の経つのが遅いのか。

 十一時五十分過ぎだったか、看護師さんが呼びに来てくれた。
 「もう、意識もはっきりしています。先生から説明がありますのでどうぞ」

 再び三階に降り、ベンチでしばらく待つ。呼び出しがあり、部屋へ。

 「腫瘍は1cm未満のものでした。その周り1.5cmを摘出、切除部の検査でも、リンパにも癌は飛んでいませんでしたので、手術は完了、もう意識もはっきりとしていますので、明日、退院しても大丈夫なくらいです。」

 あ、明日・・・。

 「切除した患部です。」と言って、女医はガーゼにくるんだこぶし大のものを開いた。さっきまで妻のものであったその肉塊は白く、鶏肉と言われればそうかと思ってしまいそうなものだった。

 患部が1cm、その周り1.5cmということは、直径4cm程度で円周状に切除したということなのだろう。

 「これが癌です。」と見せられたが、白くポチッとした丸いものが、同じような色の肉塊の中に見えるだけだった。触る勇気はなかった。後で妻は怒っていたが、写真も撮らなかった。いや、撮れなかった。

 再びデイルームで妻を待つ。エレベーターが開き、ベットの上に妻らしき姿が見えた。追いかけて病室へ行く。
「処置をしてからお呼びしますので」 また戻る。

 呼ばれて病室に入ると、酸素マスク、点滴、尿管、心拍計がつけられていたが、ごく普通に話をすることができた。

 「先生にな、しこりがなくなったみたいって言ったんやけど、ちゃんとありますから大丈夫です。って・・・」

 「すぐに眠くなりますからね、って言われて、ほんまにすぐ眠くなった。と思ったら起きてくださいって言われてん。」

 と言って妻は笑った。

0 件のコメント:

コメントを投稿

 
/* G-analitics ----------------------------------------------- */ /* G-analitics-END ----------------------------------------------- */