2010年4月2日。手術は午前10時から行われる。家族は8時くらいには来ておいてほしいとのことで、午前七時に家を出ることにした。
目覚まし時計を六時半に合わせていたが、息子に六時二十分に起こされた。
病院に着くと、「もしかしたら来れないかもしれない」と昨日言っていたお姉さんも来てくれていた。五時半起きだという。
妻は、「なんかな、今さわっても(しこりが)わかれへんねん。もしかしたら無くなったんとちゃうやろか?」などと言っている。まぁ、そんなわけはない。
白い手術着に着替え、圧力ストッキング、紙パンツ・・をはいた妻と、お姉さん、息子、ワシは一昨日までK病院にいたという看護師さんに伴われて、病室の四階から手術室のある三階へ降りた。
手術室の扉が開き、妻は手を振りながら中に歩いて入っていった。以前に盲腸で手術した時は、点滴か何かで予備麻酔をして、ストレッチャーに乗った状態で手術室に入ったと記憶するが、もうそんなことはしないのだと言う。
デイルーム(休憩室)で待機しておいてくれと、看護師は言う。売店で弁当を買って、朝食をとる。早くて二時間・・・。まったくなんでこんなに時間の経つのが遅いのか。
十一時五十分過ぎだったか、看護師さんが呼びに来てくれた。
「もう、意識もはっきりしています。先生から説明がありますのでどうぞ」
再び三階に降り、ベンチでしばらく待つ。呼び出しがあり、部屋へ。
「腫瘍は1cm未満のものでした。その周り1.5cmを摘出、切除部の検査でも、リンパにも癌は飛んでいませんでしたので、手術は完了、もう意識もはっきりとしていますので、明日、退院しても大丈夫なくらいです。」
あ、明日・・・。
「切除した患部です。」と言って、女医はガーゼにくるんだこぶし大のものを開いた。さっきまで妻のものであったその肉塊は白く、鶏肉と言われればそうかと思ってしまいそうなものだった。
患部が1cm、その周り1.5cmということは、直径4cm程度で円周状に切除したということなのだろう。
「これが癌です。」と見せられたが、白くポチッとした丸いものが、同じような色の肉塊の中に見えるだけだった。触る勇気はなかった。後で妻は怒っていたが、写真も撮らなかった。いや、撮れなかった。
再びデイルームで妻を待つ。エレベーターが開き、ベットの上に妻らしき姿が見えた。追いかけて病室へ行く。
「処置をしてからお呼びしますので」 また戻る。
呼ばれて病室に入ると、酸素マスク、点滴、尿管、心拍計がつけられていたが、ごく普通に話をすることができた。
「先生にな、しこりがなくなったみたいって言ったんやけど、ちゃんとありますから大丈夫です。って・・・」
「すぐに眠くなりますからね、って言われて、ほんまにすぐ眠くなった。と思ったら起きてくださいって言われてん。」
と言って妻は笑った。
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